マンション暮らしの防災対策は、戸建て住宅の備えとは大きく異なります。「鉄筋コンクリートだから地震に強い」と思っていても、いざ地震が起きた時に困る場面はたくさんあります。エレベーターが止まる、上の階ほど揺れが大きくなる、断水時にトイレが使えなくなる。こうしたマンション特有のリスクを知ったうえで、今のうちに備えておくことが大切です。消防庁のデータによると、国内の住宅の約4割がマンションなどの集合住宅です。この記事では、マンション暮らしの方に特化した防災対策のポイントをまとめました。

マンション暮らしの防災が「戸建てと異なる」理由

 マンションが戸建てと大きく違う点は、「建物全体の共有設備に暮らしが支えられている」という点です。エレベーター・電気・水道・ガスなどのライフラインは建物全体で管理されているため、一つでも止まると住民全員の生活に影響が出ます。また、マンションは密閉性が高く空間が限られているため、家具が倒れた時の危険が戸建て以上に深刻になることがあります。

さらに、高層階になるほど「長周期地震動」の影響を受けやすくなります。長周期地震動とは、ゆっくりとした大きな揺れが繰り返される現象で、震源が遠くても高層階では長時間・大きく揺れ続けることがあります。気象庁も高層マンション居住者向けに注意を呼びかけており、家具の転倒対策は戸建て以上に徹底しておく必要があります。マンション暮らしの防災対策は、こうした「マンション特有のリスク」を知ることから始まります。

エレベーターが止まった時の「生活の変化」に備えておく

地震が発生すると、エレベーターは震度5強程度で自動停止します。点検が完了するまで使用できないため、場合によっては数日から数週間、階段だけで生活しなければならなくなります。5階・10階・15階ともなると、毎日の生活への影響は非常に大きくなります。特に、赤ちゃんや小さなお子さんを抱えているご家庭や、膝や腰に不安があるご家族がいる場合は、エレベーター停止の影響は想像以上に深刻です。

まず考えておきたいのは、「エレベーターが止まった状態で、今の備蓄を階上まで運べるか」という点です。水や食料など重いものを大量に階段で運ぶことは大変なため、普段から上の階に必要なものをまとめて備蓄しておく意識が大切です。また、赤ちゃんを抱えながら暗い階段を下りることを想定して、ヘッドライトや抱っこ紐を玄関近くに置いておくことも有効な備えです。停電と重なった場合、階段は真っ暗になります。非常用の懐中電灯を玄関のすぐそばに置いておくことを、今すぐ確認してみてください。

室内の「転倒・落下」を防ぐために今すぐできること

マンションの室内は空間が限られている分、家具が倒れた時に逃げ場がなくなる危険があります。特にリビングや寝室に背の高い家具がある場合、地震時に転倒した家具の下敷きになることは、自宅内での最大の危険の一つです。家具の転倒防止は、マンション暮らしの防災対策の中でも今すぐ取り組める最優先事項です。
次の項目を参考に、今の部屋の状態を確認してみてください。

・背の高い家具(本棚・食器棚・タンス)は壁や天井に固定器具で取り付ける
・テレビは転倒防止マットまたはベルトで固定し、画面の落下・割れを防ぐ
・食器棚の扉には耐震ラッチを取り付け、食器の飛び出しを防ぐ
・ベッドや布団の周囲には、高さのある家具を置かないようにする
・玄関から階段・出口までの避難動線には、倒れやすいものを置かない

固定器具はホームセンターや通販で手軽に入手でき、賃貸マンションでも壁を傷つけずに取り付けられるタイプが増えています。「賃貸だからできない」と諦めず、まずはベッド周りの家具から対策を始めることをおすすめします。小さなお子さんが過ごす部屋から優先して確認してみてください。

室内の安全対策が整ったら、次は食料・水の備蓄を確認しましょう。目安量や優先順位はこちらの記事をご覧ください。

マンションは「在宅避難」に向いていることが多いです

鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンションは、木造戸建てに比べて耐震性が高く設計されています。2024年の能登半島地震でも、1981年以降の新耐震基準を満たすマンションは被害が比較的少なかったことが確認されています。建物に構造的なダメージがない場合は、避難所よりも自宅にとどまる「在宅避難」がご家族にとって安全で快適な選択になることが多いのです。

ただし、在宅避難を選ぶためにはいくつかの条件を確認することが必要です。建物に大きなひびや傾きがない、管理人や管理組合からガス・水道の安全確認が取れている、そして3日分以上の食料・飲料水・衛生用品が備わっていること。この3つが揃っていれば、慣れた自宅で過ごすことがご家族の体力と精神力を守ることにつながります。マンション暮らしの防災対策として、在宅避難のための備えを「最初の一歩」として整えておくことをおすすめします。

在宅避難と避難所避難の判断基準をさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
在宅避難のための食料・水・衛生用品をまとめてそろえたい方は、こちらからご確認いただけます。

マンションだからこそ大切な「ご近所との関係」

隣にどんな方が住んでいるか、マンションではわからないという状況も少なくありません。しかし、災害時に助け合えるのは、まず「顔の見える」ご近所さんです。一人暮らしの高齢の方、足が不自由な方、小さなお子さんがいる家庭。階段しか使えない状況で、そうした方々に声をかけられるかどうかは、普段の関係性にかかっています。マンション暮らしの防災対策として、ご近所との共助の関係を今のうちから意識しておくことは、とても重要なことです。

次のことから、少しずつ始めてみてください。

・エレベーターや廊下で会ったら積極的に挨拶し、顔を覚えておく
・管理組合や自治会の防災訓練に一度参加してみる
・高齢のご近所さんや一人暮らしの方の部屋の場所を把握しておく
・非常時の連絡先(管理人・管理組合・緊急連絡網)を確認しておく

「知らない人ばかりで話しかけにくい」と感じる方も多いかもしれません。しかし、ごみ捨て場での一言や、エレベーターでの短い挨拶でも、顔なじみになるだけで緊急時の声かけがずっとしやすくなります。いざという時に「助けて」と言える関係を、日頃の小さなコミュニケーションから育てていきましょう。

まとめ|マンション暮らしの防災は「特有のリスクを知る」ことから

マンション暮らしの防災対策は、「丈夫な建物だから安心」では終わりません。エレベーター停止・長周期地震動・限られた室内での家具転倒リスク・断水時のトイレ問題。これらのマンション特有のリスクを知ることが、正しい備えへの出発点です。室内の家具固定・在宅避難のための備え・ご近所との関係づくり。どれも今日から少しずつ取り組むことができます。「うちのマンションではどうする?」をご家族で話し合うことが、もっとも大切な防災対策の第一歩になります。

マンション暮らしの備えをまとめてそろえたい方は、ソナエラボの防災セットをチェックしてみてください。