「避難所で役立つ持ち物」というと、食料や水、懐中電灯などをイメージする方が多いかもしれません。しかしそれだけでは、避難所生活を乗り越えるには足りないことがあります。避難所生活で役立つ持ち物には、「生きるための備え」だけでなく「暮らしの質を守るための備え」が必要です。

東日本大震災では、避難所での平均滞在期間が数週間に及んだ地域も多く、能登半島地震では仮設住宅への移転まで数ヶ月を要した方もいました。長引く集団生活の中で体調を崩す方が多かった背景には、睡眠不足・衛生環境の悪化・精神的なストレスがあります。今のうちに「避難所での暮らし」を想像して備えることが、いざという時の体力と気力を守ることにつながります。

避難所生活は「思ったより長く、過酷」なことがあります

避難所は、学校の体育館や公民館などに多くの方が集まって過ごす場所です。プライベートな空間はほとんどなく、硬い床の上に毛布1枚で横になることも珍しくありません。照明は消えず、周囲の話し声や子どもの泣き声、いびきが聞こえる中で夜を過ごすことになります。内閣府の防災白書でも、避難所での睡眠不足・エコノミークラス症候群・感染症の広がりが繰り返し指摘されています。

特に子育て中のご家庭では、赤ちゃんや小さなお子さんが泣いてしまうことへの気遣いや、授乳・おむつ替えのスペースの確保など、大人だけの避難所生活とは違う困難が重なります。「避難所に着けば安心」ではなく、「避難所での生活を少しでも快適にするための準備」を、今のうちにしておくことが大切です。避難所生活で役立つ持ち物は、「いざという時に後悔しない備え」の大切な一部です。

眠りとプライバシー」を守るための持ち物

避難所で最初にぶつかる壁のひとつが、眠れないという問題です。硬い床・消えない照明・周囲の音——これらが重なると、疲れているはずなのに眠れない夜が続きます。睡眠不足は免疫力を下げ、判断力を落とし、子育て中のご両親にとっては赤ちゃんのケアにも影響します。眠りの質を少しでも守るための持ち物を、事前に準備しておきましょう。

まず役立つのが、耳栓とアイマスクのセットです。100円ショップでも入手できるシンプルなものでかまいません。周囲の音と光をカットするだけで、睡眠の質はぐっと変わります。体の痛みを防ぐために、薄くて軽いインフレータブルマット(空気で膨らむタイプのマット)もあると大きな差がつきます。コンパクトに折りたためて、持ち出し袋にも入れやすいものが増えています。

また、忘れがちなのがスリッパです。避難所の床を素足で歩くことは、衛生面でも転倒リスクの面でも好ましくありません。折りたたみ式の軽量スリッパを一人1足用意しておくことを強くおすすめします。プライバシーの確保には、大判の布やスカーフが役立ちます。ロープと組み合わせて簡易的な目隠しとして使えるため、着替えや授乳の際にも安心です。

避難所に行くべきか、自宅にとどまるべきか判断に迷う方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

「体の清潔と衛生」を保つための持ち物

避難所では水が限られており、シャワーや入浴が何日もできないことがあります。体の清潔を保てないことは、感染症のリスクを高めるだけでなく、気力の低下にも大きく影響します。「不快感を我慢する」ではなく、「清潔さをできるだけ保つ工夫」をするための持ち物を準備しておきましょう。次のアイテムを持ち出し袋に加えておくことをおすすめします。

・ボディシート・清拭シート(大きめサイズで体全体を拭けるもの)
・ドライシャンプー(水なしで頭皮の皮脂と臭いを吸着できる)
・デオドラントシートまたはロールオンタイプの制汗剤
・歯磨きシートまたは歯ブラシ+少量の水で使える歯磨き粉
・女性用生理用品(多めに準備しておく)
・手指消毒液とマスク(感染症対策として欠かせない)

これらのアイテムは100〜200グラム程度のものがほとんどで、持ち出し袋にまとめて入れても重さの負担になりにくいものばかりです。特にドライシャンプーは、水が使えない状況での頭皮ケアとして非常に有効で、気分のリフレッシュにもつながります。普段から使い慣れておくと、避難所でも抵抗なく使えます。

ボディシートやドライシャンプーなど、避難所生活の衛生グッズはこちらからまとめて確認できます。

「子どもの時間」と「家族の心」を支える持ち物

避難所での生活で意外と見落とされるのが、子どもの時間のすごし方の問題です。スマートフォンの充電が続けばよいですが、バッテリーには限りがあります。電源が使えない時間帯でも子どもが落ち着いて過ごせるよう、アナログのアイテムを準備しておくことが大切です。おすすめは、折り紙・ぬり絵・カードゲーム・小さなパズルなど、荷物にならず長時間楽しめるものです。避難所での長い時間を、子どもが自分でコントロールして過ごせる手段があるだけで、ご両親の精神的な余裕も大きく変わります。いつも使っているぬいぐるみや毛布など、慣れ親しんだ匂いのするものも、子どもの不安をやわらげる大切なアイテムです。

また、ご両親自身のケアも忘れないでください。好きなお菓子・お茶のティーバッグ・ハンドクリームなど、小さな「いつもの心地よさ」を持ち込むことが、長引く避難所生活でも気力を保つ助けになります。自分を労わる余裕があってこそ、子どもをしっかり守ることができます。

「避難所生活が長引いた時」に役立つ持ち物

避難所への入所が数日で終わるとは限りません。1週間・2週間、場合によっては1ヶ月以上に及ぶこともあります。長期化を想定して、最初の持ち出しに加えておくと後悔しないアイテムがあります。避難所での長い生活をより安全に、少しでも快適に過ごすために、次の持ち物も確認してみてください。

・折りたたみ椅子(硬い床への長時間着席を避け、エコノミークラス症候群を防ぐ)
・現金(小銭を含む)(自販機・近隣コンビニの利用、一時的な外出のために)
・延長コード(避難所のコンセントを近隣の方と分け合うために役立つ)
・夏は携帯扇風機・冬はカイロや薄手のフリース(体育館は冷暖房が届きにくい)
・着替え(2〜3日分。避難長期化でも清潔を保てる枚数)

これらのアイテムは、最初の避難では後回しにしがちなものです。しかし、数日後に「あればよかった」と後悔することが多い持ち物でもあります。折りたたみ椅子は特に、高齢のご家族や産後のご家庭には体への負担を減らす大切な道具になります。

自宅での備蓄の目安と優先順位については、こちらの記事も参考にしてみてください。

まとめ|避難所生活で役立つ持ち物は「暮らしの質」を守るものです

避難所生活で役立つ持ち物は、食料や水だけではありません。眠りを守るアイテム、体の清潔を保つグッズ、子どもの時間をつなぐアナログ道具、そして長期化に備えた快適さのための備え。これらがあるかないかで、避難所での数日・数週間の過ごし方は大きく変わります。今のうちにリストを確認して、持ち出し袋に少しずつ加えておきましょう。ご家族全員が少しでも安心して過ごせる備えを、今日から始めてみてください。

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